JACk 8
死後の世界
光の粒子が滝のように、僕の身体を襲うように入り込みます。
それは、僕が光なのか、光が僕なのか分からなるような感覚です。
それから、眠りに落ちるよりも早く、夢から覚めるよりももっと早くその時が来ました。
私は、自分の肉体に別れを告げる間も無く、僕は超光速で、上昇しているのが分かります。スピード感はありますが、圧迫感全くありません。それは完璧な自由になった感じです。
それからそうして、光の僕よりももっと強烈な光に包み込まれます。
私が気が付くと、目の前に燦然と光り輝くツルツル頭の白髭の、「杖を持ったお方」が目の前にいました。(布袋様のような、とその時思っていました。唐代のSanghaです。)
僕はその光った頭と、なんとも間の抜けたような彼の笑顔が可笑しくて仕方がありません。
そのお方は、神々しく燦然と輝いてるんです。光り輝く音までがついてるんじゃないかっていうくらい光を放っています。ツルツルの頭とぽってり太ったお腹がまぶしいくらいに光り輝いていています。
でも私は辛うじて笑うのを我慢しています。なんといっても経った今死んで来たばかりで、不謹慎というような気持ちでした。それになんといっても、残してきたキャシーの事が心配でした。その後の彼女は死ぬまで、寂しくて泣いてその後暮らしていたのが分かっていたからです。
ああ、なんてかわいそうなキャシー。
すると、この光り輝く彼の右側から、二人、僕に歩み寄ってきます。
別れた前妻に引き取られた二人の子供たちです。
「あれー、なんでこんなとこにいるの!」
僕は二人の名前を呼んで抱き合います。涙が止まりません。上の男の子は随分立派に精悍な感じに成長していました。
「今日がその日だから、みんなでお迎えに来たの」
下の女の子が歩み寄ってきて手を差し出します。
僕はまた会えたことが嬉しくて仕方がありません。
すると、今度は左側から、もう一人の青年が近づいてきます。
「やぁ」
その瞬間、僕は、かつての事が一気に感情となって溢れ出てきます。
ボブです。
彼が、僕を助けてくれたことの感謝、彼をちゃんと埋葬してやれなかった、悔しさ、悲しみ、怒り、彼が撃たれた時、溢れてくる血を止められなかったとこ、助けてあげられなかったこと。
本当にすまなかったと、僕は泣いてしまいます。
すると、彼は「いいんだ、いいんだよ。そんな事、過ぎたことじゃないか。大した事じゃない。」そう言って笑って慰めてくれます。
こうして、また逢えるなんて、ああ、神さま。なんて素晴らしいことなんだ!
◇
ここは、離発着のポート* のようなところです。
*ミンドルルイン山腹、ミナス・ティリスの膝のように突き出た「守りの丘」のようです。
巨大で壮大で、荘厳な造りです。
本当に壮大なダイヤモンドの岩山が鷲のくちばしのように突きだしたところを、丁度横から真っ二つに切断し強大な峡谷に突き出した、透き通った荘厳に光り輝くポート。
本当にここは壮大です。言葉にするのは難しいです。
天国の門、いわゆるヘブンズ ・ドアー のようなものはありません。階段もありません。
行く時も。帰って来た時も。
全てはここから始まるのです。
そして、彼らは迎えに来てくれた。帰って来た僕を出迎えるために。
再び逢えた事の喜びに満ちています。
ああ、なんて今日は素敵な日なんだ。
まったく、グレイトなハッピーだ!
すると、ジャックとして人生の全ての感情がスーッと、自分の胸の中に光の粒子となって吸収されて行くのが分かります。これは、どこか神聖な儀式のような気がします。そうすると全てが愛おしくてたまらなくなります。
ふと顔を上げると、先ほど神々しく光り輝いていた彼がいます。でも今度は、違う姿をしています。
彼はクラウンを頭に被り、エルフ王のようです。
こっちが本当の姿のようです。すると、さっき我慢していた笑いがこみ上げてきて、僕たちはお腹を抱えて笑ってしまいます。
「なんであんな格好をしてたの?めちゃくちゃ変な格好をして。わざとやってるんでしょ!それ!」
彼は、わざとやってるのです。
芝居じみたことをして楽しんでいるのです。
僕が笑うを堪えるのをわかってて、それを見て楽しんでるのです。
それが彼の出迎えの流儀なのです。
僕たちが思い、悩んだり、体験するすべての人生の苦楽は過ぎてしまえばただの笑い話になるのです。
そして、テラスではお茶の用意がされています。光り輝くなんとも高価そうな茶器や、豪華なしつらえです。
その彼が入れてくれた紅茶がなんとも、今まで味わったことがないような、香り高く、信じられないような美味しさです。
そして愛する人と飲むお茶は格別です。
空気もとても美味しいです。
身体中に染み渡る感じがします。
でも一番美味しいのはキャシーが入れてくれたお茶だなぁ、とも思っています。
これはどこのお茶なんだろう?と思っていると、ここで採れるお茶じゃが・・・
そう言われてよくよく見渡すと、
ワァーオ!
アメイジング!
私は息を飲み込みます。そこにはなんと、テラスの先には雲に霞む壮大な、荘厳な光の都が広がっていました。
白糸のように流れ落ちる滝、架かる壮大なブリッジ、せり上がる輝く塔。
なんとも形容し難いのですが、黄金のモンサンミッシェルのような、エルロンド卿の都、裂け谷のイムラドリスのような・・・
そう!それをたとえようもないくらい、荘厳で、壮大で、純粋で、黄金色に光り輝く感じにしたようです。
ワァーオ!!
これが死後の世界なんだぁ・・・
心が躍ります。
恐れはありません。恐れの意味すら存在しない。そういう感覚です。
世界はこんなにも深遠に満ちているのです。
あの滝の下は何処に行ってるんだろう?なんか早く都見物したくてウズウズしてきます。
あっち、行って見てもいいんだよね?
もちろんじゃ。ここは君のものでもあるんだから。