03 岩肌の荒野

岩肌が剥き出しの荒野に、乾いた冷たい風が吹いていた。

その声は、
身体の芯から身ぶるえするような、
地の底から響くような、
天から轟くような厚い畏怖の響があった。

その声を、聞くたびに頭がグルグルとひびき、
痛くなりめまいさえするのだ。

「子よ。子よ」

まただ。

また、あの声だ。

俺に構わないでくれ。なぜ俺に構う。

「子よ。お前の弟はどこにいる?」

「いったいなんだというのです!
俺はあいつの番人なんですか!
あいつがどこにいようが、どこにいこうが俺には関係のないことだ!
放っておいてくれ!」

男は怒りに任せて言葉を放った。

「子よ。お前の弟はどこにいるのだ?」

「俺は、俺は、あいつのことなんて知らない。知らない!」

「子よ。お前の弟の血の声が、大地から聞こえてくるのはなぜなのだ?」

「そんなことは、知りません」

「子よ。子よ。お前は、自分のしたことが分かっているのか?」

天上に光が溢れ、男は、目が見えなくなります。

彼は身の置き所がないという風に、地に伏すしかなかった。

「子よ。あなたは、あなたを知るまで、その大いなる地を行かねばならない。
さあ、行きなさい。
あなたは、あなたのその足で地を歩み、行かなければならない」

僕はそのことを全て見ていた。
そして僕は風となって彼の横を過ぎて行く。

大いなる愛がそこにあると思った。

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