岩肌が剥き出しの荒野に、乾いた冷たい風が吹いていた。
その声は、
身体の芯から身ぶるえするような、
地の底から響くような、
天から轟くような厚い畏怖の響があった。
その声を、聞くたびに頭がグルグルとひびき、
痛くなりめまいさえするのだ。
「子よ。子よ」
まただ。
また、あの声だ。
俺に構わないでくれ。なぜ俺に構う。
「子よ。お前の弟はどこにいる?」
「いったいなんだというのです!
俺はあいつの番人なんですか!
あいつがどこにいようが、どこにいこうが俺には関係のないことだ!
放っておいてくれ!」
男は怒りに任せて言葉を放った。
「子よ。お前の弟はどこにいるのだ?」
「俺は、俺は、あいつのことなんて知らない。知らない!」
「子よ。お前の弟の血の声が、大地から聞こえてくるのはなぜなのだ?」
「そんなことは、知りません」
「子よ。子よ。お前は、自分のしたことが分かっているのか?」
天上に光が溢れ、男は、目が見えなくなります。
彼は身の置き所がないという風に、地に伏すしかなかった。
「子よ。あなたは、あなたを知るまで、その大いなる地を行かねばならない。
さあ、行きなさい。
あなたは、あなたのその足で地を歩み、行かなければならない」
僕はそのことを全て見ていた。
そして僕は風となって彼の横を過ぎて行く。
大いなる愛がそこにあると思った。