Fragment of memories from that small stone-built room. episode 12-2

石造りの小さな部屋で。

この小さな石造りの部屋に来てからは、食事はあまり美味しくありません。

初めの頃は、朝と夜、お昼に出ることもありました。

でも、もう以前のようにお菓子はありませんし、

大好きだったバターがたっぷり入ったピュレもありませんでした。

もちろん、それを望むことがとても贅沢なことだとはわかっています。

最初の頃は、食事のパンとスープは男の人が持ってきてくれました。

そのうち、女の人と、違う男の人が来るようになりました。

男の人は、自分たちのことは「さん」付けで呼ぶように。と言いました。

そして、女の人は、自分達の言いつけをちゃんと守れば、美味しい食事はちゃんと持ってきてあげる。と言いました。

とにかく、言うことを聞くようにと何度も何度も言います。

女の人は、お母様のように装っているのかと思いました。

でも、ボクのお母様とは全然違います。

どこか冷たい感じがするなぁと思いましたが、

ただ、宮廷の侍女のように、身の回りの世話を淡々としてくれました。

最初の日は、本当に二人とも優しい紳士淑女のようだと思いました。
言葉遣いも、他の人と同じように、丁寧な感じがしました。

でも、次の日には、男の人は、ボクが言いつけを守らなかったと何かと言って、

言葉遣いも荒くなりました。

ボクは、何かにつけ怒鳴られるようになり、そして、時折、ボクを酷く折檻しました。

男の人は四六時中部屋にやって来ては、ボクに正しい教育をすると言って、
部屋にいるあいだ中、喋ったり、歌ったりします。

そして、その歌をボクにも歌うようにいいます。

「いいから、歌え。歌うんだ。もっと大きな声で!」

男の人は、気が済むまでそうしました。

男の人は、大体、いつもお酒を飲んで、酷く酔っています。

時々、嫌がるボクにもワインを飲ませました。

「嫌だ、飲みたくない。ボクはそれは好きじゃないんだ」

「なんだと!」

そういうと、男の人は酷くボクを殴りました。

ボクは、気持ちが悪くなって、戻してしまいます。

男の人は、何やってんだこの野郎といって、何度も何度も酷くボクを打ちました。

そして、そういう次の日は、罰として食事はありませんでした。

「お前は、うーんと、ちゃんとした、正しい躾が必要なのさ。本当にどうしようもなく、ひでぇガキだからだ。」

彼はそう言います。


食事は、パンとスープ、あるいはコップの水です。

黒いパンで少し酸っぱい味がします。
正直言うと、あまり美味しくはありません。
バターやクリームはありません。

お父様や、お母様が一緒にいた時の食事とは違います。

ボクは、食事の前にはお祈りをしようとしますが、そうすると、

女の人はそんなことはしなくていいと言います。
それからは食事の前のお祈りをすることはなくなりました。

でもボクは、彼らがいなくなった後、
眠りにつく前に、神様、マリア様にお祈りをしました。

パンは、時々乾燥していて固いです。

そのままでは硬くて、手ではちぎれません。

でも、パンが硬いのはまだいい方です。

しばらくすると、カビが生えていることがありました。
(当時のボクは、それが黴だということは知りませんでした。見たことがなかったからです。)

それまでそんなパンは見たことがありませんでした。

でも、最初にそのまま食べた時、なんだか苦くて、変な味がしました。

それからは、フワフワとしたそれがあるところは、(カビの生えたところ)爪で削いで、
味のしないスープや、コップの水で浸してふやかしてから食べました。

美味しくはありませんが、そうするしかありません。

スープは、玉ねぎか時々豆が少し入っています。
でも味はあまりしません。
スープもない日もあります。

女の人は、野菜や豆は高価でとっても貴重なんだ。といいます。

そのうち、

ボクは、

彼らから、ただ与えられるだけのパンやスープを食べるのが、

とてもいけないことに感じるようになりました。

罪悪感。

というか、うまく言えません。

でも、とても悲しい気持ちです。

ただ与えられるだけ。

なぜ、この部屋にずっといなきゃいけなくて、

なぜ、この部屋から出てはいけないのか。

これがいつまで続くのか。

でもボクは、なんとなくわかっていたのかもしれません。

水は、喉が乾いた時、

戸を叩いて、

水をくださいと大きい声で言うと、別の男の人が持ってきてくれました。

どれくらいたった頃でしょうか、

二人は来ることがなくなりました。

それから、ボクは、体の具合が悪くなり、

だんだん、起きているのがとても辛くなりました。


熱もあって、咳がでて苦しいです。

もう、食べるのも、とても辛くなりました。
食欲もほとんどありません。

でも、食べないと。

涙がとまりません。

時折、自分はお医者様だという人や、看護してくれる人も来ました。

もう、この子はもう治療は無理だろう。

小さい声で話しているのが聞こえてきます。

それから、ボクは、寝台から起き上がれなくなりました。

ある夜、

天の遠くから、光が現れます。

「ああ、イエス様、マリア様。」

光がだんだん強くなります。

なんだか、身体が光に温められ、暖かくなり、

スーッと軽くなります。
痛くもありません。

「お願いです。マリア様。ボク、もう、お父様、お母様のところに連れていって欲しいです。」

すると、気がつくと、

天使様がボクのそばにいました。

天使様は、こう言いました。

「ええ。シャルル。そなたの祈りは聞き届けられました。」

ボクは光になり、

地上を離れました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です